銀行のビジネスモデルを解説:銀行は主に4つのビジネスモデルで構成

銀行は非常に古くからあるビジネスですが、その収益構造は複数のビジネスモデルが精巧に組み合わさった、複合的な事業体です。

結論から言うと、銀行は単一のモデルではなく、主に以下の4つのビジネスモデルの組み合わせで成り立っています。その中核となるのは、銀行特有の「金利モデル」です。

1. 金利モデル(利ざやモデル) – 銀行の根幹事業

これは銀行のビジネスモデルの最も中核的で伝統的な部分です。金融業に特化した非常に重要なモデルといえます。

  • 概要
    預金者から「低い金利」でお金を集め(資金調達)、そのお金を、資金を必要とする企業や個人に「高い金利」で貸し出す(資金運用)ことで、その**金利の差額(利ざや)**を収益の源泉とするモデルです。

  • 儲けの仕組み
    貸出金利 − 預金金利 = 利ざや(利益)

  • 詳細な解説
    これは、お金という特殊な「商品」を大量に仕入れて(預金)、それに利益を乗せて販売する(貸付)という点では一種の卸売・小売モデルと見ることもできます。また、お金が余っている人(預金者)とお金が足りない人(借入人)を結びつける高度な仲介モデルとも言えます。ただし、銀行自身が貸し倒れのリスク(貸したお金が返ってこないリスク)を負う点で、単純な仲介とは一線を画します。銀行の信用力そのものがビジネスの根幹です。

  • 具体的な例

    • 住宅ローン:個人から年0.1%の金利で預金を集め、住宅を購入したい人に年1.5%の金利で35年間のローンとして貸し出す。この差額1.4%が銀行の収益の源泉となります。

    • 企業向け融資:預金で集めた資金を、設備投資を行いたいメーカーに年3.0%の金利で貸し出す。

2. サービス提供モデル(手数料ビジネス) – 収益の多様化

これは、銀行が提供する様々な金融サービスに対して、顧客が直接手数料を支払うモデルです。近年の低金利時代においては、この手数料ビジネスの重要性が非常に高まっています。

  • 概要
    資金の移動や管理といった、利便性や安全性を提供する無形のサービスに対し、その都度または定額の手数料を得るモデルです。

  • 儲けの仕組み
    各種サービス利用時に発生する手数料。

  • 具体的な例

    • (a) 決済サービス

      • 振込手数料:他の銀行や口座にお金を送る「振込」というサービスに対して手数料を取ります。これは、安全かつ確実に資金を移動させるという価値提供への対価です。

      • 口座振替手数料:企業が顧客の口座からガス代や電気代を引き落とす際に、その処理を代行するサービスを提供し、企業側から手数料を得ます。

    • (b) 為替サービス

      • 外国為替手数料:円をドルに、ドルを円に交換するサービスです。銀行は顧客に提示するレート(TTS: 販売レート、TTB: 買取レート)に手数料(スプレッド)を上乗せしており、これが利益になります。海外送金時には、さらに固定の手数料もかかります。

    • (c) ATM利用サービス

      • ATM時間外手数料・提携ATM利用手数料:銀行の営業時間外や、提携していない他の金融機関のATMで現金を引き出す際に手数料を課します。「いつでもどこでも現金にアクセスできる」という利便性への対価です。

3. 小売・仲介モデル(金融商品の販売)

銀行は自社の窓口を「金融商品のデパート」のように活用し、他社が作った金融商品を販売・仲介することで手数料を得ます。

  • 概要
    投資信託会社や保険会社が開発した商品を、銀行が顧客に紹介・販売し、その仲介役として販売手数料や信託報酬の一部を受け取るモデルです。

  • 儲けの仕組み
    販売手数料、信託報酬(顧客が保有し続ける限り、資産残高に応じて継続的に入る手数料)。

  • 詳細な解説
    銀行は、預金やローンの相談に来た顧客の資産状況やライフプランを把握しています。その顧客情報と信頼関係を活かし、「老後資金のためにこちらの投資信託はいかがですか」「万一に備えてこの保険商品がおすすめです」といった形で、最適な金融商品を提案・販売します。銀行はまさに金融商品の**「小売店」であり「代理店」**の役割を担っているのです。

  • 具体的な例

    • 投資信託の販売:A社が運用する投資信託を、銀行の窓口で顧客に販売し、販売額の2%を販売手数料として受け取る。

    • 生命保険・損害保険の販売:B保険会社の医療保険や火災保険を、住宅ローンを組む顧客にセットで提案し、契約が成立すると保険会社から代理店手数料を受け取る。

4. 専門サービスモデル(法人向けソリューション)

これは、特に大企業を相手にした高度なコンサルティング業務です。

  • 概要
    企業のM&A(合併・買収)や事業承継、海外進出といった複雑な経営課題に対し、専門的な知識と情報網を駆使して助言や実行支援を行い、高額なアドバイザリーフィーを得るモデルです。

  • 儲けの仕組み
    プロジェクト単位のコンサルティングフィー、成功報酬など。

  • 詳細な解説
    投資銀行部門などがこの役割を担います。例えば、ある企業が別の企業を買収したいと考えた際、銀行は買収先の価値算定、資金調達方法の提案、交渉の仲介など、専門的なアドバイスを提供します。これはまさに、経営コンサルティングファームと同様のビジネスモデルです。

  • 具体的な例

    • M&Aアドバイザリー:後継者不在に悩む中小企業のオーナーに対し、事業を譲渡したい優良企業を探し出し、両社のマッチングから契約締結までを支援し、取引額に応じた手数料を得る。


まとめ:銀行ビジネスモデルの構造

モデル分類銀行における具体的な事業儲けの仕組み
1. 金利モデル(中核)預金・貸付業務(ローンなど)貸出金利と預金金利の差 (利ざや)
2. サービス提供モデル振込、口座振替、為替、ATM利用各種サービスの利用 (手数料)
3. 小売・仲介モデル投資信託・保険商品の販売販売手数料、信託報酬
4. 専門サービスモデルM&Aアドバイザリー、事業承継支援プロジェクト単位の (アドバイザリーフィー)

このように、銀行は「金利モデル」という伝統的な中核事業を土台としながら、「サービス提供モデル」や「小売・仲介モデル」といった手数料ビジネスを組み合わせることで、安定した収益構造を築いています。

特に近年の世界的な低金利環境下では、中核である「金利モデル」での収益確保が難しくなっているため、銀行は手数料ビジネスや法人向けソリューションの強化にますます力を入れています。

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